走れ中村2
- 2014年6月12日
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中村は単純な男だった。買い物を、背負ったままで、のそのそ体育館にはいって行った。たちまち中村は、巡邏の孤独会に束縛された。調べられて、中村の懐中からはラケットが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。中村は、藤井の前に引き出された。
「このラケットで何をするつもりであったか。言え!」暴君藤井は静かに、けれども威厳を以て問いつめた。藤井の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。
「レスカ民を藤井の手から救うのだ。」と中村は悪びれずに答えた。
「おまえがか?」藤井は憫笑した。
「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
「言うな!」と中村はいきり立って反駁した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。藤井は、レスカ民の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当な心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私欲のかたまりさ。信じては、ならぬ。」藤井落着いて呟き、ほっと溜息をついた。
「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどは中村が嘲笑した。
「罪のないレスカ民をぼこって、何が平和だ。」
~つづく~
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